キャリアアップ・コーチングを始めた理由

「心のストレッチルーム」前田泰章です。

当ルームでは、30代、40代のキャリアアップを目指す女性会社員（公務員）向けのキャリアアップ・コーチングをおこなってるのですが、始めた経緯をお話しましょう。

昔の写真を整理していたときのこと。専業主婦時代の妻はいつも寂しそうな表情をしていた。

大学の1つ上の先輩で、私が大学を卒業しすぐに結婚。私は23歳、妻は24歳だった。

妻は大学を卒業し一般企業に勤める。しかし教員になる夢をわすれることが出来ず会社を辞め教員になった。

2年後には娘が産まれたのを機に専業主婦になる。

だが、専業主婦になったことで、心身のバランスが妻の中で微妙に崩れたようだ。

教員をしていたころと比べ、どこか寂しそうな生気のない表情になることが多くなった。

自分の居場所はここではないという無意識のサインだったのかもしれない。

 

娘が産まれてから4ヵ月過ぎたころ、38度の原因不明の高熱が出るようになった。薬を飲んでもよくならない。検査を受けるが原因は分からない。そんな状態が数ヶ月続いた。

私は仕事が忙しく家事育児は妻任せ。病気の妻に何もしてあげられなかった。

ついに限界を越え緊急入院を余儀なくされる。入院しても高熱は続いた。体重は10キロ減り、髪の毛も抜け始めた。精神的にも不安定になる妻・・・・・。

何よりもつらかったのは娘と離れ場馴れになったことだろう。

娘は両親と妻の両親が交代で面倒をみてくれたが、生後まもない娘と一緒にいられない時期というのは、寂しかったと思う。

妻は目に見えて衰弱していく。

検査が進むにつれ血液の病気ではないかということがわかってきた。血液の病気というと白血病かもしれない？ 不安定な日々が続く・・・。

幸いにも白血病ではなかった。

病名は伝染性単核球症というウイルスが原因の病気だった。病気の原因がわかると治療方法もわかり少しずつ回復に向かう。

 

その後、妻は教師として復帰する。臨時教員を数年経て、本採用になったのは35歳のときだった。

妻には問題を多面的にとらえる力、現実を冷静に判断する力、どんなにクセのある教師でもうまく合わせる力があり、課題のある児童がいる担任を任されてもなんとかできる能力があった。

私はそんな妻に管理職になるつもりはないかと持ちかけた。

しかし、「私のような頭の悪い人間が管理職になれるはずはない」学歴コンプレックスを抱えていた妻はかたくなに動かなかった。

私は「君には管理職になる素質がある」「君の居場所はもっと違うところにある」と3年間言い続けた。

 

そして、少しずつ教師としての自信をつけていった妻は管理職を目指すことを決意する。だが、女性だからという理由で挫折体験を味わうことになる。

管理職になるためには管理職試験に合格する必要があるのだが、試験の準備をする研修に参加するのが1つの近道になっていた。

妻は研修に参加する意志を男性校長に伝えた。しかし、真剣にとりあってもらえない。女性だからという理由で管理職を育てる気持ちのない男性校長は少なくないようだ。

女性会社員（公務員）が管理職になるには本当に大変なことだと思う。

男性上司などによる「女性だから・・・」というアンコンシャス・バイアス（無意識の偏見）を跳ね除け、また、女性自身にも潜む自らの活躍を阻む「思い込み」を修正していく必要があるからだ。

 

そして3年がたち、ついに妻の人生を左右する女性校長と巡りあう。

女性校長は妻の管理職としての素質をすぐに見抜いた。

妻の働きぶりが昔の自分と重なったのかもしれない。女性校長の推薦で妻は管理職の道に乗ることができた。

35歳で本採用になり、11年目の45歳で教育委員会の指導主事に抜擢。今は教頭として使命感に燃える日々を送っている。

人それぞれ適正があり向き不向きはある。結婚して主婦になり幸せになれる人もいれば主婦に向いていない人もいる。

自分がどの場所で輝けるかは経験してみないと分からないし、自分でつかみとるしかないのかもしれない。だが人はそんなに強くない。ある程度背中を押してもらわないと動けないときもある。